【出演者インタビュー】浦田大地

浦田大地が歩む語りの道の先に「嘘」は必要ない。そこにあるのは「肯定」だ。語り手の愛情の、おじいちゃんの生き様の、そして、それを聞いている私たちの存在、想像力の「肯定」だ。そのために彼は、「嘘」という名の武装を脱ぎ捨て、自らを曝け出そうとしている。彼にとっての演技とは、嘘をつくことではなく、徹底的に一人の人間としてとしてそこに立ち、語ることを追い求める行為かのように思われるのだ。だからこそ、彼の生命を、そしておじいちゃんの生命を、こんなにも身近に感じられるのだ。そんなある意味メタに人生を肯定しようとする俳優、浦田大地に話を伺ってみた。

 

インタビュー・テキスト 松尾元(ドラマターグ)

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♦︎ 浦田大地 ♦︎

静岡県出身。明治大学文学部で演劇学を専攻し、現在はフリーで舞台を中心に活動中。

柿喰う客、劇団チョコレートケーキ等の劇団公演に多数出演。

RoMT.への出演は2017年『夏の夜の夢』以来、今回で2回目となる。

じいちゃんの思い出は「煙草と熱燗」。

写真:臼杵遥志
写真:臼杵遥志

 

 

 

 

 

 

 

 

 

– ここまで稽古をやられてきて、今何を感じていらっしゃいますか

 

浦田 とりあえず通してみて、最後のシーンは自分の中でしっくりきている感じはあります。ただ中盤、流れをどう持って行こうか悩んでいます。なかなか聞いてもらえる感触を得られなくて。

 

– しっくりくる感じとは、どのようなものなのでしょうか

 

浦田 台本に書いてある語り手の台詞と、僕の人生観みたいなものがリンクしていて、共感できる部分かもしれません。戯曲として、生きている事を肯定してくれるというか、「大丈夫だよ」と言ってくれる戯曲が好きで。僕自身、人生なんとかなるだろうと思うこともあり。だから今回、ガリーが書いている事に凄く共感して。そう思う事重要だよなって思って。田野さんが、「うっちょ(浦田)は最後の方から作って行った方がいい」って言ってくれた時、そうだなと思って。そこからうまく逆算したいですね。

 

– 聞いてもらえる感触とはどのようなものでしょうか

 

浦田 お客さんの反応を貰いながら、そこに対して演技ができている時は、聞いてもらっている感じを受けますね。一緒にお客さんと話を進めている感覚と、一方的に話してしまっている感覚があって、後者だと聞いてもらえてない感じがあります。そういう時は、反応でもわかるし、自分自身でも、口だけ動かして台詞を追ってしまっているなって実感します。そうなってしまっても、どうにか持ち直せる箇所を作りたいですね。

 

– 今回なぜこの一人語りに挑戦したいと思ったのですか

 

浦田 もともとおじいちゃんっ子だったこともあり、あらすじを見た時、単純に「この戯曲読んで見たい」と思いまして。また、人とのコミュニケーション以上に、一人の空間で何かをして、それがどう見えるのかに興味を持っていまいた。もともとメタシアターみたいなものに凄く興味があって、今回孫がおじいちゃんの話を、今の孫の目線で、本物の孫じゃない役者が語るという事に惹かれたのも理由の一つです。

 

– 似たような語りの作品に触れられたことはありますか

 

浦田 初めてですね。一人芝居はやったことがあるのですが、お客さんをお客さんとして、話しかけるというのは初めての経験です。RoMTの「夏の夜の夢」に出させて頂いた時も近いことはずっとやってきたのですが、今回は本当に一人なので。ただ、だからこそ、今掴みかけていながら掴みきれていないものを手に入れた時、どういう状態になるのか、また自分がどんな役者になる事が出来るのか、興味があります。

 

– 最初戯曲を読んだ時は、どのように感じましたか

 

浦田 人生を肯定している、いい戯曲だなと思いました。「わが町」の第3幕がすごく好きで。エミリーが人生の素晴らしさに気がつく、人生を肯定している感じがすごく好きで。日常を描いた作品はたくさんあるのですが、それだけじゃなく日常を肯定してくれる感じを持てる戯曲って少なくて。こういう作品が増えればいいのにというのが1番の感想でした。日常の素晴らしさを、単に日常を見せることだけではなく、見ている僕たちのバックグラウンドまで侵食してきて、劇場を出てからのものにも思いをはせられる作品だと思います。

 

– そういった印象はやっているうちに変化していたりするのでしょうか

 

浦田 最初の印象から、大きく変わっている事はなくて、だからこそ最後の部分がしっくりきているのだなと思いますね。宣伝する時も、その感覚を共感したいという思いを持ってやっています。「それぞれそのまま生きていて大丈夫だよ」といってくれる作品。それにはすごく共感できるので、それを伝えるために役者として頑張っています。

 

– 今回の作品のおじいちゃんには、どのようなイメージを持たれていますか

 

浦田 僕自身のおじいちゃんにキャラクターとしては近いと感じています。僕のおじいちゃんも孫が大好きで、ニコニコしているのだけど、自分の好きなことはやっているみたいな人で。だから、語り手の語るじいちゃん像は、凄く共感できる部分は多くて。僕自身、孫としてじいちゃんを引いた目線で見て、「こういうところは嫌だな」と思うこともありながら、でもそういった面を含めて大好きでして。

 

– そういったご自身のおじいちゃんに対する思いみたいなものは、演じている最中に出てきたりもするのですか

 

浦田 あんまり出そうとはしていないのですが、もしかしたら滲み出ているかもしれません。ただ、最初の演技プランの中には、僕のじいちゃんはいた気がして。だから、いないことはないのかもしれません。逆に、他の俳優の語り聞いている最中に想像することは結構あります。語り手と、孫としての僕が、リンクするような感覚はありますね。太田さんが初演の際、「作品の感想以上に、見てくださったお客さんが、自分のおじいちゃんの話をしに来てくれた事が嬉しかった」という事をおっしゃっていて、もしかしたらお客さんもまた僕と同じように、孫としての自分と語り手を重ねていたから、ご自身のおじいちゃんとの思い出を思い出せたのかなと感じています。

 

写真:臼杵遥志
写真:臼杵遥志

 

 

 

 

 

 

 

 

 

– 今回の舞台であるスコットランド、グラスゴーにはどのようなイメージを持っていますか。またそれらは芝居に影響していたりするのでしょうか

 

浦田 全然想像できていなくて。検索して調べたりはするのですが。ただむしろ今回は、僕の方に引き寄せて演じようかと思っています。サッカー場とかは、僕の地元静岡のサッカー場を思い浮かべたり。その方がうまくいくのかなと思っていたりします。

 

– 今回、場所のイメージなどは作られながら演技をされているのですか

 

浦田 最初はやっていました。ただ、最近は持ちすぎないほうがいいのかなと思っています。もちろん少なからず持って入るのですが、それを示しすぎないというか。他の皆さんの語りを見ながら、それがどこであろうと別にいいという感じで語るほうが、受け手の想像の幅を広げられるような感じがして。単純におじいちゃんと孫がいる。それが一番想像力を駆り立てるような気がします。例えば、とある場所の中を走り回っていても、その場所自体のイメージを作るのではなく、その時そこを走っていた、語り手自身の感覚を持つことの方を大事にしています。

 

– 見ている際は、どうでしょうか

 

浦田 見ている時は結構想像していますね。喋っている人の背景、空気感といいますか。こういうところにその人は今いる/行っているのだなと無意識のうちに想像しながら見ています。ただ、全く関係のない連想とかもしちゃって、ふと集中力が途切れることもありますね。

 

– 今回台詞を覚えて行く中で、気がついたことはありますか

 

浦田 台詞はひたすら読んで覚えています。覚えて読んで止まったら1、2行戻ってまた読み直す事の繰り返しです。その中で、シーンによって覚えやすいシーンと覚えにくいシーンがありました。特に語り手より、キャラクターになる事が多いシーンは、覚えにくかったですね。逆に、語り手の台詞で実感に近い感覚があるシーンはすんなり覚えられた気がします。自分のままで台詞を入れる事が出来るというか。それがいい時もあれば悪い時もあるとは思うのですが。

 

– 普段のお芝居でも、自分のまま台詞を入れられる事を感じられる場面もあるのですか

 

浦田 作品にもよるのですが、割と現代の自分たちを演じる方が、自分とは違う自分になっている感覚が強くて。今の自分に近い分、違いが明確になるからかもしれないのですが。逆に、「そんな事言わないだろ」という台詞の方が、「なんでそんな台詞が出てくるのだろう」と考えるプロセスがあるので、自分のままでいる部分を感じたりしますね。それはもしかしたら、自分がそんなに嘘をつく事がうまい方ではない事に関係しているのかもしれません。喋っている台詞と、その内面、裏に流れているものが一致しない場合、苦戦する事があります。この点は今後の課題なのですが、逆に、シェイクスピアとか、中にあるもの全部喋ってしまうし、そこに嘘はないので、やりやすいしやっていて楽しいと感じる部分が多いです。

 

– 今回、腑に落ちない台詞は、どのような処理をしながら腑に落とす、または腑に落とさないまま喋っていくのでしょうか

 

浦田 割とこねくり回すことはせず、覚えたまま喋ることは意識しています。経験則なのですが、台詞をこねくり回してしまうと、僕がこうやりたいという思惑まで出てきてしまい、悪い方に転んでしまう場合が多くて。すっと喋ってしまった方が、良い結果に繋がる事が多いんです。だからこそ、頑張りすぎて嘘が見えてしまわないようにするための道を探そうとしています。例えば、今回は、「おじいちゃんと僕の話を聞いてもらいたい」という作品なので、僕自身に嘘があってはいけないなと思っています。そのため、楽しいところは無理やり抑えたり誇張したりせずそのまま楽しくやりつつ、すっと喋る事が出来るところは、すっと喋ろうとしています。

 

写真:臼杵遥志
写真:臼杵遥志

 

 

 

 

 

 

 

 

 

– では、今回、翻訳された言葉を喋ることの距離感については、どのようにお考えでしょうか

 

浦田 翻訳物感は、言葉の選び方などに感じています。ただそれって、僕らが普通にプレゼンとかで長めのお話をする時、結局そういった文体になるのかなと思っていたりもします。日本語でも、長々喋るときに少し畏まったりするじゃないですか。もしくは授業で先生がみんなに語っている感じとか。そういった文体の組み立て方に近いのかなと感じています。お話をしようとして、準備をしてきて、それを喋る感覚。だから、ザ翻訳物というものよりは違和感なく、素直に喋れている気がします。語りだからかもしれないのですが。

 

– 今回お客さんに話しかける事について、どのように感じていらっしゃいますか

 

浦田 僕どちらかといえば、いつも作品から勝手に想像してしまうタイプなのですが、今回お客さんとして感じる事は、直接語りかけられた時、より想像が広がるところもあれば、語りかけられること自体に驚きを感じることもあるなという事です。見方は人それぞれだと思うのですが、目が合うことによって台詞より目に集中し、今何を言っていたのかわからなくなってしまう瞬間もあります。ただその瞬間が面白くないわけではなくて。やる側として最初、喋っていれば、お客さんは自由に聞いて、想像してくれるものだと思っていたのですが、それはやはり違いました。ただ、大学でやっていたような、プレゼンテーションともまた少し違う。いい感じに想像させる瞬間と、今話しかけている瞬間のバランスをとる事が重要で、そしてそれは結構難しいことだと感じています。

 

– では逆に今回、お客さんとして他の俳優の語りを聞いている時、どのように感じてらっしゃいますか

 

浦田 そうですね。結構皆さんの方法を取り入れようとしています。お客さんへのアプローチの取り方や、孫とおじいちゃんの作り方には影響を受けています。特に太田さんの語りは、凄くいい塩梅だなと思っていて。太田さんは、お客さんとフラットな関係を作り上げられていて。僕は、なんといいますか、お客さんの下から入るみたいな語りをしてしまう事が多いので。だから、関係性の作り方や、その上での見せ方を、皆さんから盗めればと思っています。

 

– 他5人と見比べて見た時、自分の語りの特徴はどういうところにあると思いますか

 

浦田 学校の先生の演じ方は、自分でも気に入っていますね。授業じゃない事を大切にしてくれている人というイメージがあって。僕自身、人に教えたりする事が結構好きで、押し付けじゃない話し方が出来る人って、理想的だなと思っていて。今回出てくる先生にはそういう印象があったので、そのキャラクターを作れている事は嬉しいなと思っています。語り手も、先生のことが好きだったのだなって感じていて。むちゃくちゃやっていたことを許してくれていた先生というか。僕の学生時代にも、先生や同級生にいたずらしている奴とかいて、そういう奴をなんだかんだ許してしまうような先生が、凄く好きでした。今から思えば、先生はすごく大変だったのだと思うのですが。そして、語り手も同じように、先生の苦労というか、今になって初めてわかることとかを感じているように思います。

 

– 今回の俳優陣の他に、こんな人のギャンブラーを聞いてみたいという考えはありますか

 

浦田 俳優に限らず、いろんな人のギャンブラーを聞いてみたいとは思っています。それを見て、「この人はこう思っているのだな」というものを感じたいです。むしろ、演技とか全然やったことのないような人に読んで欲しかったりもしますね。ギャンブラーに限らず、その人のおじいちゃんの話も聞いて見たいですし。後は、太田さんよりも年齢が上の人のギャンブラーは聞きたいですね。他には、アンドロイド版とかも見てみたくはありますね。「お前のおじいちゃんって誰だよ」みたいな感じなりながら、SF作品みたいに、いろんな方向で見ちゃいそうですが。そんな中でアンドロイドが孫に見えたりしたら面白いですね。その上で、俳優版との二本立てみたいにやってみたり。想像が膨らみます。

 

– 今回の経験から俳優として持ち帰りたいものはありますか

 

浦田 本番までに掴みたいものは、お客さんに話しかける感覚です。自分も普段から人とお話しすることが凄く好きで。ただ、普段どちらかといえば、面白いところを指摘しながら広げて面白くすることが多いので。それとはまた違ったアプローチというか、自分から話しかけて、広げていく感覚は、俳優としてだけではなく、日常生活にも持ちち帰りたい部分ですね。後は、いつか自分でも一人芝居を作りたいとも思っていて。書けたらいいなとも思いますし、人に書いてもらったものを演じたり演出したりすることでもいいのですが。その時に使える引き出しとして、一人の役者がどう動けばどう見えるか、少しでも多く理解していきたいです。

 

– 浦田さんが考える「いい役者」とはどういう人ですか

 

浦田 太田さんを見ていて凄く思うのですが、例えば語り手としてその場にいる時と、物語中の時間、人物とを鮮やかに行き来出来る人だと思います。お客さんを翻弄するという言い方は少し違うのですが、お客さんの想像を一緒に連れて行ってくれる、そんな役者になりたいと思っています。

 

– 今回、どういう風に、お客さんに見てもらいたいですか

 

浦田 この戯曲をまず触れて欲しいという思いがあります。本当にいい戯曲なので。そして、そのために僕が出来る事は、この戯曲のよさを空間に広げていくことだと思っています。