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十二夜の、十二人 その⑨ 菊池佳南(フェステ)

演出家の田野です。

 

稽古は順調に進んでいます。

ここ数日は「ああもう、、、まさに喜劇!」という場面の稽古が続きました。

俳優陣はそれぞれ、普段青年団の芝居ではやらないような芝居の仕方と苦闘しつつ、

いろんなトライ(&エラー)を繰り返して、ポジティブで笑いの絶えない時間を過ごしています。

 

こうして稽古をしながら改めて感じるのは、

ただただ純粋に、シェイクスピアの戯曲の面白さ、です。

・・・まあ、いまさら?って感じが、、、戯曲を読み頭のなかで想像しているのと、

稽古をしながら実際に見えることとでは、やっぱり違うわけですね。

 

特に如実にわかってきたことは、この戯曲には【喜怒哀楽】のすべてがあり、

しかもそのどれもがはっきりしていて、極端なポイントに振り切れていて、

ひとつひとつが強烈であればあるほど、強い光が強い影を呼び込むように、

そして白と黒のグラデーデョンのあいまには無数の色の可能性があるように、

《トータル》の世界を描くことができるんだ、ということ。

そして、ディテールの振り切り方は、より広く深い全体像を描くことにつながる、ということ。

これはちょっと大きな発見でした、自分のなかでは。

 

とはいえまだまだまだまだ(!)、もう全然荒削りですし。

俳優陣もしっくりきていないところを多々抱えていますので、

一日一日、ちょっとずつちょっとずつ、確かなものを削りだしていく作業を続けて、

ちょっとやそっとじゃ忘れられないような『十二夜』をお届けしたいと思います。

 

えー。

 

『十二夜の、十二人』 も、いよいよ終盤戦、

第3コーナーから第4コーナーのあいだぐらいにはたどり着いたでしょうか。。。

 

本日ご紹介します方は、コチラ。

 

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道化・フェステ役の、菊池佳南さんです。

 

ご一緒するのは、やはり昨年5月の『ゴーストシティ』に続いて2回目。

ワークショップの現場ではそれ以前からもお仕事させていただいたりしてるんですが、

いつまでたっても呼び捨てにしたりあだ名つけたりができません、私。なぜでしょう。。。

下の名前を「ちゃん」付けです。きっと「ちゃん」が似合うんだと思います。

そこはかとなく。そういうことにしておきましょう。

 

あ。そうそう。忘れないように先に書いておきますが、

佳南ちゃんは、2月7日(土)から16日(月)まで、

青年団リンク ホエイの公演『雲の脂』という公演に出演します!

場所は、『十二夜』と同じ、アトリエ春風舎。

また同じくホエイさんの『珈琲法要』新潟公演(3月6日)にも出演するとのことで。

いずれもぜひぜひご覧くださいませ。

 

いやしかし、『十二夜』までの1ヶ月間のあいだに、

2本本番があるっていうのは、、、さすがに超人的なスケジュールですね。。。

体調崩さず、なんとかがんばってほしいです。。。

 

 

で。

 

今回の『十二夜』。

青年団に入団して以来、「いつか必ずやろう」と思っていたプロジェクトでしたが、

準備が整ったと感じて、実際に実現にむけて具体的に動き始めたのは、2013年の初秋でした。

 

プロジェクトが動きだしたら、演出家としては当然「じゃあ誰に出演してもらいたいか?」と

具体的に考えるわけですが、うん、まあ正直に書いてしまいますけれども、

一番最初に「これ絶対」と直感的にあたまに浮かんだキャスティングのうちのひとりが、

【佳南ちゃんのフェステ】でした。

 

もちろん、『十二夜』は前作『ゴーストシティ』と連動して考えていて、

『ゴーストシティ』を仙台で製作することはその時点で決まっていたことから、

仙台出身の佳南ちゃんに参加してもらうことは必然だったのかもしれないですが。

 

でも、よくよく考えてみれば、『十二夜』の道化を女性が演じるっていうのは、

普通は考えられない、ちょっと可笑しな選択だと思うんですよ。

宝塚のように「すべて女性キャスト」とかいうことだったりすればあり得るかもしれない。

少なくとも、過去に観た『十二夜』のプロダクションで、道化が女性だったことは、、、

一度もなかったですね、記憶する限り。

 

なので、あとあと考えれば、そして今考えても、決して常識的なことではないのですが、

それでも、今回の『十二夜』では、「菊池佳南が、道化フェステ」というイメージ、

不思議とただの一度も揺らがなかったなぁ。

 

僕は菊池佳南という俳優を、すばらしいコメディエンヌだと思ってるんですよね。

すごくいい意味で、ピエロを思い出します。

元気印だけどどこかに影があり、笑いながら涙を誘い、

真面目なんだけど同時に可笑しみがある。

『ゴーストシティ』という作品は、ひとりが複数の人物を演じる、という構造で、

そのなかで佳南ちゃんに演じてもらった通称“スペース・ガール”という役がありましたが、

あれはまさに菊池佳南のコメディエンヌとしての資質が存分に発揮された好例でした

(個人的には、呑んだくれて友人の幽霊を見たことを告白する若い女性役も忘れ難いなあ)。

 

フェステには、道化らしい機智に富んだ言葉の応酬もあれば、何度か歌を歌う箇所もあります。

それ以上に、強い光と強い影の拮抗する世界で、その中間にある忘れさられてしまったもの、

白と黒のグラデーションのあいまにある無数の可能性の存在を、掬い出していく役目を担っていて。

それらはたぶん、“メランコリー”と接しているものなんだろうなあ、と。

 

僕らにとっては、まずは何より、常に“直感”とか“勘”とかが先にあって、

言葉はそのあとからやってきて、何となく理論や理由を形成するようになるんですよね。

“直感”が正しかった、ということを証明するのが、ある意味では、僕らの仕事です。

 

菊池佳南がフェステを演じる、そしてたぶんそれは相当面白くなるだろう、ということについて、

一抹の疑念もありません。疑念がある疑念もありません。確かに。

 

ぜひお楽しみになさってください。

 

第9回目は、道化フェステを演じる菊池佳南さんの巻、でした。