RoMT.

十二夜の、十二人 その⑥ 伊藤毅(フェイビアン)

演出家の田野です。

 

再開しますっ!!!

 

体調をずっと崩していたり、沖縄・水納島での作品づくりに全身全霊を費やしていたり、

なんだかバタバタすごしたこの10日ほど。

そして現在、僕の目の前には非常勤講師として勤務している帝京大学の、

終わらないレポート採点地獄。。。

そこから現実逃避してしまえ!といわんばかりに、

しばらく更新が途絶えていた、『十二夜の、十二人』をしたためようと、

こういうわけです。

 

しばらくぶりの更新、第6回目にご紹介するのは、コチラ。

 

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フェイビアン役の、伊藤毅さんです。

 

昨年5月のSPIC×RoMT『ゴーストシティ』に続いて、今回が2度目の協働作業です。

 

昨年の秋には、青年団若手自主企画・伊藤企画をたちあげて、

伊藤くんが作・演出をした作品を上演。かなり好評な感じでした。

僕も観ました。いやー、面白かったです。「作」としてもよかったんだけど、

個人的には「演出家」としての伊藤くんの仕事がとても面白かった。

当たりの優しさとか、でもちょっと譲れない芯、みたいなもののバランスが良くて。

 

もともと伊藤くん、『ゴーストシティ』でご一緒する以前から、

もちろん俳優さんなんですけど、そこはかとなく演出家的な、

ちょっと違う視点から物事を捉えようとしてるなあ、ふみこみすぎないようにしてるなあ、

みたいな姿勢を感じることがよくあって。

なので、伊藤企画を観たときは、「あー、なるほどー、そういうことなのねー」と、

ひとり勝手に合点がいった、みたいなところがありましたね。

 

で、伊藤くんにお願いした、《フェイビアン》っていう役。

 

・・・謎ですね。

 

物語がちょうど中盤を迎える第2幕第5場で急に登場する、

「誰なんだ突然コイツは?!」っていう存在です。

出てくるまで誰かに言及されるでもなく、本当に突然出てきます。

そして、世界中のシェイクスピア学者がフェイビアン登場についてあれこれ思案し、

研究していて、様々な説を唱えていますね。

 

このフェイビアンについて、僕はあるひとつの仮説を立てています。

 

・・・といっても、これは本当になーんの根拠もありません。

ただ何となく「そう感じる」だけ、なんですが。

 

シェイクスピアが存命だった約400年前。

『十二夜』が上演されたとき、シェイクスピア自身は、

このフェイビアンの役を演じたんじゃないだろうか、と。

 

俳優でもあったシェイクスピア自身、この『十二夜』を書き進めながら、

実は途中で自分も出演したくなってしまって、それを前提に急遽付け足した役が、

フェイビアン、という人だったんじゃなかろうか。

 

だって、フェイビアンが登場する第2幕第5場は、

【マルヴォーリオいじめ】が始まるところですもん。

シェイクスピアはこの場面を書きながら、ついつい興が乗ってしまって、

自分もこれに俳優として加担したい、と考えたんじゃないだろうか。

だって、フェイビアンが登場するところって、どこも「からかい」の場面ですよねえ。

しかも絶対に観客が爆笑するイメージは持ててたはず。

 

・・・いやー、そういう意味で、こんな面白い場面なら自分も出演して、

楽しくなりたくなっちゃったんでしょうね、シェイクスピアさんは。

 

くれぐれも。

この説にはなんの根拠もないし、理論もないし、単なる勘にすぎません。

あるいは、単純に僕の都合のいい解釈なのかもしれない。

 

でも、なんか、ロマンがあるよねえ。

フェイビアン役をもしシェイクスピアが嬉々としながら演じてたとしたら。

 

フェイビアンのこの、ちょっと客観的なところ、

ひょっとしたらシェイクスピア本人なんじゃないかと思われるところ、

延長線上には『テンペスト』のプロスペローとかがいるわけですが、

そういうのを想像してみたときに、僕のなかでは、

伊藤くんの存在っていうのがぴたっとハマった感じがしてます。

まあ、そのへんの信頼感、みたいなものが、『ゴーストシティ』より以前から、

伊藤くんをフェイビアンにキャスティングしてた理由でした。

だって熊いじめしてる姿が似合うもんね、伊藤くん。

 

第6回目は、フェイビアンを演じる伊藤毅さんの巻、でした。