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十二夜の、十二人 その⑧ 荻野友里(マライア)

演出家の田野です。

 

2月に入り、『十二夜』にむけた本稽古がスタートしました。

 

また、2月2日(月)より、チケットの予約が開始となっております。

ご予約は青年団のオンラインチケット販売からお手続きいただけます。

https://www.komaba-agora.com/ticketsell/

各回30席程度と、一回の客席数が大変限られておりますので、

観劇ご希望日のご予約は、ぜひお早めにお手続きくださいませ。

 

あ、そうそう、そういうわけで稽古も本格的に始まりまして。

テキスト(言葉)と行動の扱いに関して、「こういうことを試したい」っていうことがあるので、

いまのところこちらからいろいろと提案する形で稽古が進んでく感じですが、

いやいや、できるだけはやく、俳優のみなさんが自由にいろいろなことを

試して遊べる環境に持っていきたいって、思いながら稽古場にいます。

いまはある意味、まだ僕が《知っていることの範疇》のなかにいるだけなので。

《知っていることの実現》なんて、演出家のモチベーションにはならない。

知らなかったこととか想像もしていなかったことが、目の前で起き続けるっ!

わーすごい!こんなの考えたこともなかった!・・・って思えるようなことが、

稽古で生まれ続けるって状態、それが僕にとっての稽古の面白さで、理想の稽古場です。

そのためには、俳優やスタッフがひとりひとり、それぞれがそれぞれの立場で、

主体的に、表現したいことを表現しようと主張しあうことが必要。

そういう環境からしか誰も見たことがないものは、生まれないと思うんですよね。

 

優れた演出家とは?という問いに対する、とあるひとつの金言、

【稽古場で俳優たちに対して「I don’t know. Lest’s talk about that」と言えるかどうか】

という言葉の意味を、ようやく最近理解できるようになった気がします。

 

 

すっかり前置きが長くなりましたが、、、

今回がようやく第8回、これで三分の二に到達ですね、

「十二夜の、十二人」のコーナーです。

 

今回ご紹介するのは、コチラ。

 

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・・・えー、横を向いてしまっておりますけれども。

マライア役の、荻野友里さんです。

 

横を向いているのは、なんか照れくさかった、的なことなのでしょう。

 

普段は「荻野」とか「友里」とか呼んでますけれども、

ここではあえて、荻野さん、と優しく呼ぶことにしましょう。

 

前回荻野さんに出演してもらったのは、2006年1月に実施した第2回公演、

鈴江俊郎戯曲2本立て上演のときの、『髪をかきあげる』でした。

9年前ですよ、もう! まー信じられない。

あの頃の荻野さん、若さが溢れ、フレッシュでハツラツとしてましたなあ。

あれから9年。いまはいい具合に歳を重ねて、いい具合のおばちゃんキャラになっております。

 

・・・ま、とはいえ僕も当時は30代になったばっかりでしたからね、

いまは、、、完全に自分のことは棚にあげてこんなことを書いておりますが。

 

で、荻野さんの話。

特にこの数年、大きな劇場から小劇場まで、しかも多彩なジャンルの舞台を経験して、

CMや映画などのメディアでもコツコツ活躍しております。

今回久しぶりに稽古場で荻野さんの芝居をみてみて、そういう経験の蓄積からか、

明らかに以前より自由になり、表現する欲求も強くなっているなあと感じる反面、

「・・・いやいや、全然変わってないわ。」と、

いや、これとてもポジティブな意味で、感じたりもしております。

 

それは、「声」。

荻野さんの俳優としての一番の武器は、「声」だと思うんですよね。

大劇場でも問題なく通る“強い声”、というわけでは、ありませんが、全然。。。

でも、とにかく質感がとてもいい。

そして荻野さんの声って、人の記憶に残る(残りやすい)声、なんですよねえ。

 

『髪をかきあげる』の頃、演出家としての僕は、正直言って、

そのことにまったく気がついてませんでした。まったくでした。

そう、だから今にして思えば、、、そもそも鈴江戯曲なんだし、

荻野さんの声をどう使うか、言葉をどう発するかというところに注力して演出していけば、

強烈な求心力が自然に生まれ、そしてそれが全体の軸になるような芝居ができただろうに。。。

 

ということもあって、“テキスト”や“言葉”からうまれるものの最優先に考えたい、と思う、

今回の『十二夜』には、ぜひ荻野さんに出演してもらいたかったのでした。

ある意味では、ちゃんとした形でリベンジしたかった、ということなんでしょう。

 

荻野さん演じるマライア。これもまた面白い役ですよね。

マルヴォーリオには「Lighter people」と言われてしまうように、

オリヴィア姫の邸にいる“下々の者たち”で、姫の侍女。

しかし彼女は悪戯好きで、マルヴォーリオをコケにする首謀者でもある。

悪戯を仕掛けるグループのリーダーは、ぱっと見、トービーのように思いますが、

いやいや、本当の“ワル”は実はマライアですよね。

 

このマライアをどう描くかで、プロダクションの印象はたぶんがらっと変わります。

 

個人的には今回のマライアは、荻野さんの《当り役》になりそうな気がしています。

そこまで持っていけたらいいな、と。はい。思ってます。

 

いや、いけると思いますけどね、全然。

 

というわけで。

第8回目は、マライアを演じる、荻野友里さんの巻、でした。